広範な地政学的戦いの一環として犠牲にされたナワリヌイ

2020年9月15日
ジェームズ・オニール
New Eastern Outlook

 現在ロシアの反体制派政治家アレクセイ・ナワリヌイの病気に対して行われている報道ほど、欧米メディア標準の情けない劣化を明らかに例証する近年の物語は数少ない。

 ナワリヌイは、与党のロシア政治家たちにとって、せいぜい一つの些細な問題に過ぎない。最近の選挙で彼が得た票は2%以下だ。大半の欧米諸国では、このような得票率は、単一争点の狂信者や、宗教的変人や、わずかな時間、衆目を集めるのを楽しむ、いつもの膨大な連中と一緒くたにされ、ほとんど言及されるまい。選挙風景にかろうじて登場する集団は、ナワリヌイが得るようには、広範囲に報道されないはずなのは確実だ。

 従って、彼の多くの冒険や災難を宣伝するのは、より広範な政治的目的に役立つのだが、この場合、ウラジーミル・プーチンが、本格的な反対者に直面するというプロパガンダ主題を呼び起こす。関連する話題は、もし当該の欧米お気に入りの人物が、実際に今までに、本物の政治的権力は言うまでもなく、かなりの票さえ獲得できないなら、それは政治的な不正行為のせいに違いないというのだ。

 ナワリヌイは、その経歴で、一度ならず物理的に攻撃され、選挙法や、政治的抗議行動に関する法律に対する絶え間ない違反のかどで、一度ならず投獄されている。もちろん彼が逮捕されても、迫害されているという彼の叫び声や、支配体制に対する脅威やらのと現実主義が完全に欠如しているのが特徴の類似の主張を弱めることは決してない。

 こうしたことのどれも、欧米主流のメディアから見て、彼を貶める効果はない。モスクワへのフライトで病気になったナワリヌイの最近の事件は、特に欧米メディアで、反ロシア宣伝、特に対プーチン攻撃を呼び起こした。

 熱狂的な相次ぐ主張には、一連の事件の論理的分析が欠如している。ナワリヌイは、一杯のお茶を飲んで、フライトで病気になったと我々は聞かされている。差し当たりこれが正しいとして、お茶はフライト前、それとも最中に、飲み干されたのだろうか? この質問への答えは曖昧だ。もしそれがフライト前なら、お茶をいれた人物、あるいは彼にそれを届けた人を調査するのにどんな措置がとられたのだろう? 再び、完全に空白だ。

 ナワリヌイは機内で、酷く病気になったことは、圧倒的に、(もし本当に何かがあったなら)、彼は機内で物質を摂取したことを示唆している。またしても、誰から、どんな状況でかは、答えられないままだ。問題とされているノビチョクは、ほとんど一定不変に急速に効果のでる致命的物質だとされているが、彼は生き残った。報道では、彼はやかましく金切り声を上げていたとされ、一般に致命的物質の、致命的な量を摂取したことと関係づけられる反応ではないことを示唆している。

 飛行機は経路から逸れて緊急着陸し、そこでナワリヌイは病院に急送され、必死な努力で命は救われた。これは、国家が援助する暗殺未遂とは全く一致しない。

 ロシアの病院は彼の命を救う必死の努力をした。治療の一部として、彼らは検査でノビチョクタイプによる中毒の証拠を示さなかった血液検体を採取した。病院は、この一連の出来事の理解にとって、極めて重要なその血液検体を保持している。

 ナワリヌイは、それからベルリンの病院に飛行機で運ばれた。再び、いくつか奇妙な点がある。彼は、どうやら、これまでのところ未知の組織が支払った非営利の飛行機で連れて行かれた。経費は高かっただろうが、それを誰が支払ったのか我々は知らない。

 もしナワリヌイが実際、ノビチョクのような毒を盛られていたら、彼がこのような中毒が容易に確認可能な欧米病院に飛ぶのを許されるという論理は全く理屈に合わない。

 今、ベルリンの病院は、ナワリヌイ氏から(細部は、むしろ曖昧だ)ノビチョクのような物質を検出したと発表した。この発表に対しては、多くの論理的可能性がある。

 第一に、ロシア医療チームが信じられないほど無能で、患者の病気の原因を発見できなかったということだ。これは、まずありそうにないと思える。第二に、ナワリヌイはベルリン(五時間の飛行)への途中、あるいは彼がベルリンに到着した後、飛行機で物質を投与された。ロシアの医療専門家が有能だったことを認めるなら、物質が投与された時期は、フライト中か、到着後だったに違いない。この選択肢は、ナワリヌイに、実際、検出された、このような物質があったと想定しているが、確実と言うには程遠い仮定だ。

 これはナワリヌイへの攻撃に対する、より重要なことに、事件がプロパガンダに使われたより広範な動機の問題を提起する。これは、ナワリヌイの病気に責任があるとして、ロシアに対して作り出されているヒステリーの本当の動機に我々を近づける。

 ロシアの石油とガスをドイツにポンプで送るノルドストリーム2プロジェクトは、あと数週間で完成に近付いている。アメリカが、このプロジェクトには、大反対で、プロジェクトを中止させる取り組みで、ドイツと(領海をパイプラインが通過する)デンマークをいじめ、甘言でつり、恫喝し、賄賂を使ったのは秘密ではない。

 誰も全く驚かないが、その代わりに、アメリカはドイツに、彼らの燃料を供給したいと望んでいる。アメリカの選択肢の費用はロシア製品より約40%高い事実が、ドイツ(そして他のヨーロッパ市場)がロシアの選択肢の方を好む強力な理由だ。アメリカの供給元に依存しないという政治的誘因もある。アメリカがヨーロッパの供給元になれば、ほぼ確実に価格は上がり、ヨーロッパ・ユーザーにとって、競合上、大きく不利になる。

 執筆の時点で、ドイツとロシアの合意は剣が峰にに立たされている。これまで、アメリカのいじめと恫喝に耐えていたドイツのアンゲラ・メルケル首相は、今、ロシアとの契約について曖昧に思われる。ドイツが契約を取り消せば、ドナルド・トランプにとっては大勝利で、ベラルーシでのクーデター未遂挫折に対する多少の慰めにもなるだろう。

 契約取り消しが、ヨーロッパ人に莫大な費用を課すことなど、トランプは全く心配していない。経済的経費はヨーロッパ側の負担に過ぎない。彼らは、またもや独立の面目をはっきり潰すことになる。ロシアは、経済的、政治的な絆の、より広範な再編成の一環として、東方の選択肢を開発しているが、ロシアにとっても損失は同様に膨大だ。

 おそらく、この情けない長編物語から引き出される主要な教訓は、ロシアはヨーロッパ市場に対する代替物を作る努力を強化しなくてはならないことだ。ナワリヌイは、アメリカが演じる広範な地政学ゲームに巻き込まれると、個人がいかに方便に使われるかの実例なのだ。

 ジェームズ・オニールは、オーストラリアを本拠とする法廷弁護士で地政学専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/09/15/navalny-sacrificed-as-part-of-a-wider-geopolitical-battle/

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 ジャーナリストの横田一氏、官邸総理会見から「指名」排除されていたが、IWJの岩上氏は、4回続けて『抽選外れ』の怪!日刊IWJガイド冒頭を引用させていただこう。

はじめに~菅義偉(すが よしひで)氏が第99代総理大臣に選出されるも高揚感も期待感もまったくなし! 岩上安身は官邸総理会見から排除!? 4回続けて『抽選外れ』の怪! 菅氏の後任となる内閣官房長官には加藤勝信(かとう かつのぶ)厚労相を起用!! 政府の立場や見解を誠実に国民に発信するべき官房長官に、政権に都合の悪いことは一切答えない鉄面皮の「菅話法」から「ご飯論法」ではぐらかす名手へバトンタッチの悪夢!!

 大竹まことのゴールデンラジオで、たまたま拝聴した深澤真紀教授の日本の若者の無力感と、その遠因の法律についての話は衝撃的だった。若者だけでなく大人も無力感。この無力感蔓延こそ、与党の作戦。