中国ウイルスは新たな大恐慌を引き起こすだろうか?

2020年2月11日
F. William Engdahl
New Eastern Outlook

 歴史的に、大恐慌は、主要金融市場周辺での予想外の出来事で始まっている。1931年5月、ウィーンのオーストリア・クレジットアンシュタルト銀行の突然の破綻が、戦後ドイツの脆弱な銀行体制を丸ごと崩壊させ、主要なアメリカ銀行が根底から揺さぶられて、アメリカでの大恐慌を引き起こした。またしても、中国の2019年新型コロナウイルスと、その世界貿易に、特にアメリカ-中国貿易対する影響は、新しい経済不況を引き起こす、金融市場外部の予測しなかった出来事になるのだろうか?

 中国の武漢と周辺の都市で爆発するコロナウイルスに関するニュースが突如知れわたった1月20日頃までは、グローバル、特にアメリカの金融市場は、連邦準備銀行が、より多くの流動性を供給することと、選挙年に、トランプ政権が、できる限りのあらゆることをする組み合わせの行動で、経済を前向きに維持できるだろうと楽観的だった。一月、連邦準備銀行の流動性がアメリカ史上、最も過大評価された株式市場に油をそそぎ、株は人為的高騰を続けた。

 ところが、それ以来、公式の中国感染者の数が毎日急激に増加し、コロナウイルスが原因の死亡が増えて、世界の主要製造センターで、沈み始めている、グローバルな工業サプライチェーンの巨大な供給源部分、中国は、医療上の緊急事態で、壊滅的な経済的影響を受け、その結果としての、現時点で7700万人以上の市民と、関連する製造をしている都市の防疫線封鎖に直面しかねない。それは、世界中、特に準備不足のアメリカを、深刻な景気下降に引きずり込みかねない。

 既に崩れそうなアメリカ経済

 通常、主要マスコミで軽視されているのは、世界最大の経済、アメリカが、中国ウイルス・ショック前に、既に景気悪化の気掛かりな兆候を示していた事実だ。

 一月以前の、過去最も気掛かりな衰退の一つは、多くの人々が、アメリカ・エネルギー・ルネッサンスの先導役だったと信じていた部門、つまり、かつてブームのシェール石油とガス部門だった。これまで10年間にわたり、世界の多くの人々を驚かせて、アメリカは、ロシアとサウジアラビア両方を追い越し、世界最大の石油生産国になった。一月始め、アメリカ石油生産高は、一日1300万バレルになった。その上昇の膨大な部分が、非在来型のシェー石油井戸によるもののためで、大半がテキサスだ。

 アメリカのシェール・エネルギー産業は、中国が2020年、更に、185億米ドルのエネルギー製品を買うことに同意した最近のアメリカ-中国の貿易取り引きに希望を託していた。これは、2017年アメリカ輸入、91億ドルの二倍で、2021年には、更に339億米ドルの増加だ。この割当量は、アメリカからの今年の、中国の原油、液化天然ガス(LNG)と石炭の毎月輸入の二倍で、来年は三倍だ。

 これは全て、コロナウイルスの爆発と、それに続く、主要航空会社による中国の旅行禁止令、中国で多数の工場が閉鎖すに前のことだ。経済がウイルス流行の影響で打撃を受けて、世界最大の石油輸入国、中国が、今後数カ月、際立ってより少ない石油を輸入になるだろうという予想のために、今石油価格が急激に下落している。一月末時点で、中国の石油需要は、一日約300万バレル、消費量は全体で20%減り、アメリカのウエスト・テキサス・インターメディエイト石油の価格は、50ドルを下まわっている。これは2008年の金融危機以来最大の石油需要ショックだ。

 一月に、ウェスト・テキサス・インターミディエイト石油価格が15%下がり、一月としては、1991年以来最悪の下落だ。中国ウイルスで増大する死者数に関する毎日の報道が現れるにつれ、それは一層悪化している。価格はリビア内戦以来、一月の毎日百万バレルの石油削減にもかかわらず下がり続けている。中国の流行による損害が拡大し続けるにつれ、世界の石油需要は下がり続けるだろう。それは生産を削減するという石油輸出国機構の緊急決定にもかかわらず、脆弱なアメリカ・シェール石油産業にとって大惨事を意味する。

 2019年12月、中国のウイルス・ニュース以前に、既に価格が収益性を下まわって、さまよい続けるにつれ、アメリカ・シェール石油企業破産申告の数は際立って増大していた。産業モニターのベイカー・ヒューズによれば、稼働中のアメリカの石油とガス掘削リグの数は一年前の同時期から265減り、790リグにまで落ちた。多くのアメリカ石油とガス会社は中国への新たな輸出ブームを絶望的に期待している。それさえ楽天的だが、最近の進展は、上昇するコストと下落する井戸生産性に直面しているアメリカのシェール生産者にとって悪夢となりかねない。

 危機に瀕しているアメリカ輸送

 企業が、連邦準備銀行の流動性を、新たな生産設備に投資するのではなく、自社株買い戻しに使うために、上昇できる株式市場と異なり、本物の経済は、経済の中で移動する商品貨物に依存している。アメリカでトラック輸送は重要だ。指標は、中国ウイルス事件のずっと前から前向きではなかった。12月、アメリカ最大のトラック運送業者集団の一つ、インディアナのセラドン社が破産保護を申請したが、ドライバー3,000人以上の、アメリカ史上最大のトラック輸送破産申請だ。2019年の三四半期に、約800のトラック運輸会社が破産したが、運送業データ企業のブロートン・キャピタルによれば、2018年の破産の二倍以上だ。

 しかもアメリカ商品出荷減少はトラック輸送だけではない。全般的だ。業界団体Cass Freight Indexによると、一月のアメリカ貨物総出荷、鉄道、荷船、航空、陸上で出荷された商品は、前年比、7.9%減った。それは対前年比、13番目の月次減少で、2009年11月の金融危機以来最も痛烈な下落だった。それは穀物のようなバルク商品は含まず、自動車、自動車部品などを含んでいる。鉄道輸送貨物は9.2%減った。下落の一つの主な理由は、アメリカ製造における弱さだ。最近の主張にもかかわらず、少なくとも大きな数では、雇用が、中国からアメリカに戻っていないことだ。その代わりに12月の ISM米国工業購買担当者景気指数(PMI)は、11月から0.9パーセント下がり、47.2%になった。連続5番目の減少の月で、2009年6月以来、最も速い減速の月だった。雇用、新規注文、新規輸出注文、製造、受注残高と棚卸し資産の全てが縮小している

 これに加えて、2019年の深刻な荒天被害の後、貿易戦争の結果、中国への輸出を削減されたアメリカ農民の脆弱な状態がある。大いに喧伝された12月のアメリカ・中国貿易協定第一段階は、もし本当であれば、アメリカ農民を大きく押し上げる約500億ドルのアメリカ農産物を中国が輸入するよう要求している。2017年、アメリカは、中国に大豆やトウモロコシを含め、農業産品を190億ドル輸出した。今コロナウイルスが中国じゅうに蔓延するにつれ、農産物輸出を押し上げる可能性は日ごとに弱まっている。北京は既に、ウイルス影響のため、新貿易協定を再考要求するとほのめかしている。2019年、アメリカ農場破産は、1980年代以来、最悪の危機の一つで、2018年より24%も多く、2020年の巨大中国輸出市場の消失は、かつかつで生きている何千人もの農民への衝撃的な打撃だ。

 この全ては、それ自体は経済破滅を引き起こさない。とは言え、世界製造の中心中国からのサプライチェーンを混乱させる、最近史上最も重要なリスクは、不幸なことに、まさにその、あらゆる兆しを示しているが、このリスクが増大し続ければ、ボーイングやGMやアップルや無数の他のアメリカ企業に計り知れない悪影響を及ぼすだろう。

 何百万人もの普通のアメリカ人にとって、過去10年の超低金利の中、上昇する株式市場は退職後の主な蓄えの源だった。今世界経済に対するコロナウイルスの影響の恐れから、世界中の株式市場が、大幅な売りで、急落は、急速にパニック売りに変わり、何百万人ものアメリカ人の蓄えを消し去りかねない。緊急事態に対して、1000ドルの貯金があるアメリカの家族は、わずか41%なので、影響は深刻なはずだ。

 この危機の、20年前とさえ違う経済側面の差は、中国が、欧米、特にアメリカからの製造外注で最大のシェアを享受している世界経済グローバル化の劇的衝撃だ。韓国の主要自動車メーカー現代自動車と起亜は、重要な中国部品サプライチェーンが、コロナウイルスの停止したままなため、韓国での生産停止を発表した。ドイツ産業は、自動車部品から工作機械に至るまで、中国からの輸出に大きく依存している。フランス、イタリアや他のEU経済も大きな打撃を受ける立場にある。

 AxiCorpのスティーヴン・アイネスは「中国の巨大な産業と消費エンジンへのどのような経済的衝撃であれ、グローバル化で深まった貿易、金融のつながりを通して、急速に他の国々に広がる」と警告する。アメリカほど、このような衝撃の被害を受けやすい国は、余りない。2003年の中国と香港でのSARS危機でさえ、中国のグローバル化の度合いは、ずっと低かった。

 世界経済の負債総額は過去最高で、アメリカの負債総額も同様で、思いがけない中国の医療大惨事は、わずか数週間前には、ほとんど誰も想像していたはずがない経済的影響を与えかねない。どれだけの中国の製造企業が閉鎖しているのか、どれだけ長く続くのか、我々には今のところ、正確な報道がなく、グローバル・サプライチェーン崩壊は、まさに始まろうとしている。これは世界を揺るがす可能性があるが、金融市場は、知らぬが仏で全てを無視している。

 F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師。プリンストン大学の政治学位を持つ石油と地政学のベストセラー作家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/02/11/will-china-virus-trigger-new-great-depression/

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 日々の感染拡大報道を見ていての妄想。魚の頭氏と厚労相のコメント後、女性が微笑して言う。

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