対イラン戦争

2020年1月3日
TDオリジナル
Chris Hedges

 バグダッド空港近くでのアメリカ合州国による、イランのエリート・クッズ軍司令官ガセム・ソレイマーニー大将暗殺は、イラクの過半数を占めるシーア派信徒の、アメリカ標的に対し広範囲にわたる報復攻撃に火をつけるだろう。レバノンとシリアで、中東全体で、イランに後援される民兵と反抗分子を始動させるだろう。既存の大混乱、暴力、破綻国家と戦争、地域でのほぼ20年のアメリカ大失敗と計算違いの結果は更により広い、一層危険な大火になるだろう。結果は不吉だ。アメリカは、すぐに自身イラクの包囲攻撃下にあるのに気づくだけでなく、多分イラクから追い立てられる。イラクには、わずか5,200人のアメリカ部隊の戦力しかなく、イラク内のアメリカ国民は全員「即」出国するよう言われ、大使館と領事業務は閉鎖されたが、状況は我々も直接イランとの戦争に巻き込みかねない。アメリカ帝国は、すすり泣きでなく、華々しい音をたてて死ぬように見える。

 彼がバグダッド空港を出ようとしていた時に、軍用車列にミサイルを発射したMQ-9リーパー無人機によって殺害されたソレイマーニーを標的にすることで、人民動員隊として知られるイランに支援されるイラク民兵軍司令官代理アブ・マハディ・アル・ムハンディスや、他のイラク・シーア派民兵指導者の生命も奪った。攻撃は、窮地に立たされた二人の暗殺計画者ドナルド・トランプとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の政治的生命を一時的に強化するかもしれないが、それはアメリカ合州国による帝国の自殺行為だ。肯定的結果はあり得ない。それはキリスト教右派過激派が喜ぶアルマゲドン風のシナリオの可能性に道を開くものだ。

 イランとの戦争では、中国が供給した空対地ミサイルや機雷や沿岸の大砲を、世界石油供給の20%の回廊であるホルムズ海峡を封鎖するために使うのを見ることになろう。石油価格は、二倍、おそらくは三倍になり、世界経済を破壊するだろう。イランによる、イスラエルに対する報復攻撃は、イラクのアメリカ軍施設攻撃と同様、何百人もの、多分何千人ものも死亡者をもたらすだろう。サウジアラビアからパキスタンにまで至る地域のシーア派信徒は、イランに対する攻撃をシーア派に対する宗教戦争として見るだろう。サウジアラビアの200万人のシーア派信徒は石油に富んだ東部の州に集中しており、イラクの大多数のシーア派と、バーレーン、パキスタンやトルコのシーア派の共同体は激怒し、アメリカと、数が減りつつある同盟諸国を攻撃するだろう。アメリカ本土を含め、テロ攻撃が増大し、ペルシャ湾では、石油生産に対して広範囲にわたる妨害工作が行われるだろう。南レバノンのヒズボラは、北部イスラエルに対する攻撃を再開するだろう。イランとの戦争は、それが終わった時には、アメリカ帝国が終焉し、後に、死体の山と、くすぶる残骸を残る、長い広範な地域紛争を引き起こすだろう。奇跡が、このストレンジラブ博士の焼身自殺から、我々を引き戻してくれるよう願おう。

 2018年、アメリカが一方的にイラン核合意から離脱した際、「厳しい報復」を誓ったイランは、トランプ政権に課された害が大きい経済封鎖の下で既にぐらついている。アメリカと、シーア派が多数派のイラクとの緊張もエスカレートしていた。12月27日、カチューシャ・ロケットが、米軍が配備されているキルクークの軍事基地に発射された。アメリカ民間請負業者が殺害され、アメリカ軍人数人が負傷した。アメリカは12月29日に、イランに支援されたカタイブ・ヒズボラ民兵軍に属する建物を爆撃して、反撃した。二日後、イランに支援された民兵が、バグダッドの米国大使館を攻撃し、建物の一部を襲撃し、破壊し、閉鎖させた。だが、この攻撃はまもなく子供の遊びのように見えるだろう。

 2003年のアメリカ侵略と占領後、統一された国家としてのイラクは破滅させられた。かつての近代的インフラは荒廃状態だ。電気、水道は、せいぜいで不安定だ。高い失業率と広範囲にわたる政府の腐敗に不満があり、血まみれの路上抗議をもたらした。競い合う民兵部隊と民族派閥が、競合し、敵対する飛び地を切り開いた。同時に、アフガニスタンでの戦争は、ワシントン・ポストが公表した細部にわたるアフガニスタン・ペーパーの通り、敗北している。リビアは破綻国家だ。5年のたゆまないサウジアラビア空爆と封鎖後のイエメンは、世界最悪の人災の一つに耐えている。我々が5億ドルの経費で資金供給し、武装させたシリアの「穏健」反政府派は、恐怖の違法な統治を引き起こした後、打ちすえられ、国外に追いだされた。この軍の愚行、アメリカ史上最大の戦略上の大失敗経費は、5兆ドルから7兆ドルの間だ。

 すると、なぜイランと戦争をするのだろう? なぜイランが違反しなかった核合意から離脱するのだろう? なぜアルカイダとイスラム国家を含めて、他のジハード集団とともに、タリバーンの不倶戴天の敵である政府を悪者にするのだろう? なぜ我々は、イラクやアフガニスタンにイランとの事実上の同盟を粉々にするのだろう? なぜ既に極めて激しやすい地域を、一層不安定にするのだろう?

 これらの戦争を開始し、実行した将官や政治家連中は、彼らが作り出した泥沼に対する責任をとろうとしていない。彼らにはスケープゴートが必要なのだ。それがイランだ。少なくとも200,000人の一般人を含め、何十万人もの死者や体を不自由にされた人々や、家から追い立てられ、難民キャンプに追いやられた何百万人もの人々は、我々の失敗した見当違いの政策の結果であるはずがないと彼らは強く主張するのだ。我々が初めに、その多くを訓練して、武装させた、急進ジハード集団や民兵の拡散は、継続的な世界のテロ攻撃とともに、他の誰かのせいでなければならないのだ。将官、CIA、これらの戦争で豊かになった民間請負業者や武器製造業者や、ジョージ・W・ブッシュやバラク・オバマやドナルド・トランプのような政治家や、果てしない戦争の応援団を勤める全ての「専門家」や名士連中とともに、イランが我々の大災厄の責任があると彼ら自身確信し、我々も説得したいと望んでいるのだ。

 我々が中東で、特にイラクとアフガニスタンで解き放った混乱と不安定は、イランを地域の支配的な国にした。ワシントンは仇敵に力を与えたのだ。ワシントンは、イランを攻撃すること以外、どのようにすれば、その失敗を反転できるか分かっていないのだ。

 トランプもネタニヤフも、サウジアラビア皇太子モハンメッド・ビン・サルマン同様、スキャンダルに陥っている。彼らは新しい戦争が、彼らの外国、国内の危機から、注意の流れを変えられるだろうと信じている。だが、彼らは、アフガニスタンやイラク、リビア、イエメンとシリアで、戦争のためにしたよりも合理的な、イランとの戦争戦略がないのだ。もしアメリカがイランと戦争すれば、トランプがイランとの核合意を離脱した際、疎遠にしたヨーロッパ同盟諸国は、ワシントンに協力しないだろう。国防総省はイランを攻撃し、占領するために必要な何十万という軍隊が欠如している。対イラン戦争で、サダム・フセインと共に戦い、大半のイラン人に裏切り者と見なされている連中が構成する、取るに足りない、信頼を失ったイラン人反政府集団ムジャーヒド-エ-ハルクMEK)がイラン政府に対する、意味ある兵力だというトランプ政権の見方はばかげている。

 国際法と、イラン国民8000万人の権利は、アフガニスタンや、イラク、リビア、イエメンとシリアの国民の権利が無視されたのと全く同様、無視されている。イラン人は彼らの専制政権について、どう感じているにせよ、アメリカ合州国を、同盟者や解放者としては見るまい。彼らは占領されることを望んでいない。彼らは抵抗するだろう。

 対イラン戦争は地域全体で、シーア派に対する戦争と見なされるだろう。だが、これは、戦争の手段に関して、支配しようとしている文化や人々について、ほとんど知らない観念論者には到底理解できない計算だ。イラン攻撃は、2006年、ヒズボラを打倒し損ね、この武装集団に大半のレバノン人を結び付けた、対レバノン・イスラエル空襲以上に成功することはあるまい。イスラエル爆撃は、400万人のレバノンを制圧できなかった。領土がフランスの三倍、人口8000万人の国を、我々が攻撃し始めたら何が起きるだろう?

 アメリカ合州国は、イスラエル同様、国際法をズタズタに切り裂き、違反し、欠席するのけものになったのだ。我々は先制戦争を開始するが、それは国際法の下では、でっち上げの証拠に基づく「侵略犯罪」と定義されるものだ。我々は国民として、我々の政府に、これら犯罪の責任をとらせなければならない。もし我々がそうしなければ、我々は、恐るべき結果をもたらすはずの新世界秩序を法典化する共犯者だ。それは条約や法規や法律なしの世界だ。ならずもの核保有国から巨大帝国に至るまで、どんな国であれ、他の人々への義務を無効にするため、国内法を発動できる世界だ。このような新秩序は、大半がアメリカ合州国によって導入された50年にわたる国際協力を取り消して、我々をホッブズ風の悪夢に押し込むだろう。外交や広範囲の協力や条約や法則や世界共同体を文明化するよう設計された全ての機構が、凶暴性に取って代わられるだろう。

 アラビア語も話すChris Hedgesはニューヨーク・タイムズ元中東支局長。イランを含め、この地域を7年報道した。

記事原文のurl:https://www.truthdig.com/articles/war-with-iran/

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 昨夜、報道番組と称するもので、イラン問題の部分をちらり見た。無茶なことは言っていなかったが。奥歯にものがはさまった雰囲気だった。今、この事件を考えていて、思いついた。オウム・カルト。超大国そのものがオウム状態と考えると、世界の不思議なことが氷解するのではと思えてきた。オウムは理不尽なポアをしても、さすがに外部には公表しなかった。勝手にポアして、平然と公表するおぞましい人々が支配しているのが宗主国。価値観外交はオウムが支配する国への完全服従を意味するだろう。

 新刊購入は無理かもしれないがブログ「私の闇の奥」筆者、藤永茂様の著書『アメリカン・ドリームという悪夢―建国神話の偽善と二つの原罪』を再読したいと考えている。

 2019年4月16日、下記のMoon of Alabamaによる記事を翻訳掲載している。

トランプはなぜイラン革命防衛隊軍団を外国テロ組織に指定したのか?

 日刊ゲンダイDIGITAL、現代イスラム研究センター理事長宮田律氏の記事を拝読した。この方、あまり大本営広報部で見かけない。

緊急寄稿 「米国に死を!」中東海域に向かう自衛隊の今後

 御著書は何冊か拝読している。例えば、下記。