地政学勢力の構造的転換を示したBRIフォーラム

2019年5月7日
ジェームズ・オニール
New Eastern Outlook

 2回目のBRIフォーラムは2019年4月21日から27日まで北京で開催された。40人の政府首脳と90の国際組織代表者を含め、150の国から代表者5000人が参加した。

 16の他の中欧と東欧の国に加わって、覚書にイタリアが署名した、中国の習近平主席によるヨーロッパ歴訪成功に続いて、フォーラムが開催された。スイスとルクセンブルグも同様に、BRIに参加する意志を示した。

 イタリアの協定は、フランスのメーカー、特にエアバスに何十億ドルもの利益をもたらす取り引きに署名したフランスのような他のEU大国には、用心深く迎えられた。

 BRIは、2013年にアスタナとジャカルタで行った演説で、習主席によって初めて公式に述べられた。わずか5年あまり前のその時以来、構想は、150以上の国の注目や想像力や支持を獲得したのだ。主要要素が二つある。アジア全体と、ヨーロッパまで延びる鉄道と光ファイバーネットワークという地上の道と、中国をヨーロッパ、アフリカと中南米を結び付ける一連の海の航路だ。

 すべての記録に残る歴史に、類似のものは一つももない。過去数世紀、様々な植民地帝国、特にイギリス、フランス、スペイン、ポルトガルやオランダがもちろんあった。宗主国と、植民地の関係は極めて不平等で、恩恵の大半が、一方向に宗主国に流れる状態だった。植民地は、人的、自然資源を無慈悲に搾取された。

 習主席は将来のための異なる構想を詳述した。2017年、彼は基本原則に基づいて、BRIのこの青写真を更に改善した。平和と協力。開放性と包括性。受容と理解。そして相互利益。それら原則の上に積み上げられ、青写真は進展し続けているが、支援と、更なる発展を保証するには、時間と経験とともに、適応や修正が要求されるというのが理由の一つだ。

 フォーラムでの習主席基調演説で、独創的提案を適応させ、修正し、批判に対処する必要性の認識が示された。習主席は大本の四つの基本原則から後退したわけでなく、それに追加をした。改善には、投資決定をする手段の透明性への誓約も含まれていた。この文脈で、こまかい約束には中国による汚職を絶滅させる取り組みの継続も含まれていた。

 二つ目の改善は、個別の国と、既存の多国間集団との協議を強める動きだった。三つ目の要素は、中国に対して浴びせられる主な批判の一つが、知的財産の窃盗とされていることを中国が認めたことだった。この主張は常に誇張されており、精査に耐えないものだ。それにもかかわらず、習主席は、中国の知的財産を共有すると誓約した。中国は、ジュネーブの世界知的所有権機関に登録された新特許では大差で既に世界のリーダーなのだ。

 知的財産を共有するということは、サイエンス・パークの設置や、主要BRIメンバーとの人事交流を含んでいる。ここで極めて皮肉なのは、BRIの非加盟国、特にアメリカはこの恩恵を共有せず、中国ではなく、彼らにとって不利だということだ。

 西欧諸国によるBRIに対するもう一つの批判の主なものは、BRIが、参加している比較的貧しい低開発国にとって「負債の罠」を作りだすということだ。このような批判は、主要欧米諸国が支配している主要金融機関のIMFと世界銀行や、特に主要大国アメリカが、債務国を貧しくするため金融操作を使う遥かに酷い実績があるのを決して認めない。

 IMFと世界銀行救済措置の代償は、債務国経済の「構造調整」だった。特に、これは貧しい国が医療や教育やインフラに対する支出を減らし、国家の役割を最小にし、国内産業を民営化し、労働市場を柔軟にし(すなわち賃金と労働条件の低下)、国家資源に対するの海外からの投資や所有に対する規制上の支配を減らすことを意味していた。

 そうした国々は、このような政策によって貧しくされるだけではなく、主権と代替戦略を策定する自由を失うのだ。IMFと世界銀行の主要受益者介入は、巨大多国籍企業だ。だから、様々な国々がBRIに殺到したのも、ほとんど驚くべきことではない。彼らは実際、小難を逃れて、大難に陥っているのだろうか?

 BRIフォーラムと同時期に、ロジウム・グループが「負債の罠という疑問」と呼ぶものの分析を発表した。分析結果は、中国が対外債務再交渉に携わっていた24カ国の40件の再調査によるものだ。

 重要な調査結果には、財産差し押さえはまれな事象で、ケースの大部分で再交渉結果は、借り手に好都合な結果だったという所見もある。40件中の18で負債は帳消しにされた;11件で負債は延期された。4件が借り換えられた。更に4件で条件が再交渉された。

 異なる形の中国活動の例がマレーシアで見られる。2018年半ばの選挙前に、当時の候補者マハティール・モハマドは、マレーシアの東海岸鉄道建設プロジェクトを不公平だと批判した。マハティールが選挙に勝った後、プロジェクトは保留にされた。中国は条件再交渉に同意した。新合意が2019年4月(わずか8カ月後に)まとまり、建設がすぐに再開された。

 マハティールはBRIフォーラムに出席し、構想に対する彼の支持を誓った。「私は完全にBRIを支持している。私の国マレーシアがプロジェクトから利益を得るだろうと私は確信している」と彼は述べた。中国が反中国プロパガンダを理解し、彼らの国のための利益に関してプロジェクト評価ができた場合には他の国々とも類似の成功を経験している。

 マハティール発言は、IMFとの「交渉」に耐えた国が表明する感情ではない。彼らのIMFと世界銀行との経験が、今、152もの国がBRIに参加している主な理由なのだ。

 フォーラムのもう一人の基調演説者はロシアのプーチン大統領だった。彼の演説は、BRIが開発のための手段以上のものだという意見をはっきり詳述していた。BRIは、プーチンが「大ユーラシア・パートナーシップ」と呼ぶロシアの目的としっかり同調している。

 ユーラシア経済連合メンバーと中国のBRIプロジェクト間の協力は経済的利益を遥かに超えている。大ユーラシア・パートナーシップは「ユーラシアで現在進行中の様々な二国間、多国間統合プロセスのより密接な協力を推進する」ことを目指している。

プーチン大統領は述べた。「断片化された世界の政治的、経済的、技術的な状態や、国連安全保障理事会を回避して、違法な一方的制裁や、より酷い場合には貿易戦争を押しつける保護貿易主義のリスクに対処する効果的な方法を我々が見出すことは重要だ。」

 プーチン演説では、アメリカは一度も言及されなかったが、この発言が一体誰に向けられていたのかは明白だ。フォーラムが終わって間もなく、アメリカが画策したクーデター未遂後に、アメリカはベネズエラに対し更に軍事的恫喝をし、ペルシャ湾への空母機動艦隊を派遣して、イランに追加制裁を課し、イラン政府に「メッセージを送り」、中国からの輸入に何千億ドルもの追加関税を課した。多分補足は不必要だろうが、これら全ての行動は、国際法、国連憲章と既存の多国間貿易協定に違反している。

 プーチンは「良き友人」習に言及し、中華人民共和国は「我々の主要支持者で、大陸の統合された開発における我々の天性のパートナーとして見なす国」だと思うと述べた。

 これは欧米の最悪の悪夢だ。Andre Vltchekが言っている通り「世界に対する絶対的支配を失うという見通し以上に、欧米を憤慨させるものはない。」。

 アメリカは何十年間も、ロシアと中国の間で、政治的、戦略的、軍事的提携が発展するのを妨げようと努めてきた。彼らは、中国-ロシア協力にとっての、主要な刺激を与えているのが、彼らの政策と動きであることを理解し損ねている。

 BRIは欧米支配の敗北の最も明確な表現だ。それが、減少しつつある同盟国集団メンバーのドイツとオーストラリアに、ノルドストリーム2に参加しないよう、南シナ海で中国との対決に参加するよう、アメリカが圧力をかけている理由だ。

 トニー・カータルッチは、スリランカでの最近のテロ攻撃が、増大する中国の地理的、地政学的影響に対するアメリカの抵抗を考慮に入れて見るべきだと主張している。ジョセフ・トーマスはタイに関して、似た主張をしている。これは第二次世界大戦以来のアメリカの行動パターンと首尾一貫している。

 世界の全ての地域から、152の国がBRIに参加したという事実は、大多数の世界の国が、覇権世界観を維持するためにアメリカが駆使する、いじめ、金融破壊、侵略と占領よりも、BRIを良い選択肢として見ている証拠だ。

 彼らは確かに正しい。BRIフォーラムは十分な構造転換が世界地政学の舞台で生じていることを明示している。これまでの400年間享受してきた特権を維持するため欧米が戦う度合いが、世界の安定性に対する大きなリスクだ。

 ジェームズ・オニールは、オーストラリアを本拠とする法廷弁護士、地政学評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/05/07/bri-forum-points-to-tectonic-shift-in-geopolitical-power/

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 いわゆる連休時期以来、テレビをみない習慣がつき、相撲も見ていなかった。昨日久しぶりに相撲を見た。貴景勝のけがはどうなのだろう?

 今日のIWJ岩上安身によるインタビューは『国体論 菊と星条旗』の著者、白井聡氏。

日刊IWJガイド「本日午後2時より、『戦後の対米従属の構造は戦前の天皇制支配から引き継がれた!? 岩上安身による京都精華大学人文学部専任講師 白井聡氏インタビュー』を配信!」 2019.5.16日号~No.2436号~(2019.5.16 8時00分)