アメリカには徳政令が必要だ

2019年5月6日
Paul Craig Roberts

 小学生時代、私や友達は考古学と古代文明にとても興味を持っていた。我々は手に入る限りの本を読んだ。私の親友は考古学者になって、我々が実際知っている以上に妄想していた古代遺跡を調査するつもりだった。

 最近私が理解している限り、一般人は誰もシュメールやバビロニアやアッシリアやウルについて全く考えていない。アメリカの若者たちにとって、紀元前2,500年ではなく、1940年代が古代の話なのだ。

 旧約聖書に先行するずっと昔のことは、おそらく残虐で、人をいけにえにする、野蛮で差別的な時代だと想像されているのだ。要するに、ホラー・ファンタジー映画か、ビデオゲームの脚本だ。

 実際は、これら文明は、我々自身の文明よりずっと進歩していて、ずっと人道的だった。支配者は、債務者と債権者間のバランスを維持し、社会が長く継続できるよう精力を傾けており、遥かに進んでいたのだ。以来ずっと下り坂なのだ。

 支配者は、周期的に債務を帳消しにすることで、社会的バランスを維持し、それによって、社会の寿命を維持していた。支配者は、複利では負債が経済より早く増大することを理解していたのだ。その結果、農地の差し押さえとなり、富と権力が、少数の債権者の寡頭政治勢力に移ってしまう。税収源であり、軍の兵士や公共インフラを維持するための賦役を提供する、経済的に自立した自作農民を、支配者と社会は奪われることになるのだ。大惨事になるはずだ。貪欲な寡頭政治集団が支配者を打倒しかねず、農地を奪われた住民は、債務免除と引き換えに、軍で保護してくれる侵略者側に逃げかねない。

 支払い不能な債務によって社会が溶解してしまうのを防ぐため、支配者は実業家間の商業債務ではなく、一般市民の農業債務を周期的に帳消しにしていたのだ。

 債務免除の理由は、平等主義ではなく、安定性だった。

 マイケル・ハドソンが、ハーバード大学ピーボディ博物館特別研究員として、古代言語学者と働いて、30年過ごしたおかげで、我々はこの青銅器時代の経済政策成功という魅力的な物語を知っている。研究は、10年間にわたり、五つの専門家会議と、最近のハドソン著書『彼らの債務を免除せよ』を生み出した。

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 現在、アメリカで国民は支払い不能な債務に溺れている。学生ローン債務、クレジットカード債務、住宅ローン債務、州政府や地方自治体の債務、事業債務。しかし為政者は、大銀行と金融機関のひどい無責任な投資にまつわる債務だけ免除した。連邦準備銀行は、1000万人の自宅所有者が差し押さえられるのを放置しながら、銀行の不良債権を買い上げるために、4兆ドルを印刷した。学生ローン債務が、大学卒業生が独立した家庭をもつことを阻んでいる。住宅ローン債務とクレジットカード債務が家庭が小売り販売を押し上げる自由裁量所得を得るのを阻んでいる。だが現代経済学には、我々の社会が債務過剰で崩壊するのを阻止する処方せんがないのだ。

 債務過剰のため、アメリカはずっと昔に独立農民を失っている。干ばつや黄塵や、連邦準備制度による融資金利の上昇が、農民が土地を差し押さえられて、農地が企業農業の手に渡るのに十分だった。今日同じことが乳製品生産者に起きている。トランプ関税への対応として、カナダはアメリカ乳製品に関税をかけるはずだ。所得下落で、アメリカ酪農家は、債務元利返済負担を過度に負ったままになる。酪農業も少数の手に集中される定めのように思われる。経済的自立は、アメリカ社会から追放されつつある。

 市場独占や買い手独占や少数独占の問題は本物だ。債務をかかえたアメリカ人が彼らの高生産性、高付加価値の雇用を海外移転され、更に今就いている低賃金の国内サービス職からAIロボットに追いだされようとしているのだから、なおさらだ。企業利益を最大にする活動は、アメリカ人の収入を減らすが、債務を減らすわけではない。こうして債務返済はいっそう困難になる。

 現在のアメリカは、ニューヨークの巨大銀行が、連邦準備銀行の政策や、例えば銀行制度の規制緩和や、それに続く救済措置のような金融関連法制を支配する状態だ。市場独占や買い手独占や少数独占のほうが、彼らを抑制したり、どんな形にせよ、彼らに逆らって行動したりできない中央政府より強い状況になっている。企業が雇用を海外移転して、国民の職を奪っている。債権者の要求が、大学卒業者が自分の家庭をもつのを阻止している。更なる債務拡大による場合を除き、債務返済が小売り需要に、とって代わっている。

 これは上昇ではなく下降する経済だ。ワシントンがアメリカ人にしているより、明らかに、ハムラビはバビロニア人に遥かに良くしていた。

 Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

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 『世界』の人気連載、初めての書籍化『メディア、お前は戦っているのか メディア批評 2008-2018』神保太郎『世界』編集部編を読み始めた。大手商業メディアはしっかり戦っていると思う。支配体制に奉仕して。そして繁栄している。一方、庶民のために戦っているメディアは、財政的に窮状にある。

日刊IWJガイド「日本にとってもIWJにとっても分水嶺となる今年夏に向け、IWJはファンドレイジングシンポジウムを6月30日に開催する予定です!」 2019.5.11日号~No.2431号~(2019.5.11 8時00分)

 今後の岩上安身氏インタビューの予定を拝見した。

 岩上安身は、今後も精力的にインタビューを行っていく予定です。以下にインタビューの日程をお知らせいたします。

・本日5月11日(土) 高エネルギー加速器研究機構名誉教授・黒川眞一氏
・5月16日(木) 京都精華大学専任講師・白井聡氏
・5月27日(月) ジャーナリスト・吉田敏浩氏

 後段でもお伝えしますが、黒川氏には、福島県伊達市の個人被爆データを過小評価した「早野・宮崎論文」の問題についてお話をうかがいます。

 白井氏へのインタビューでは、天皇の代替わりや新元号などを中心に取り上げつつ、対米従属関係の構造的な問題も視野に入れる予定です。

 吉田氏へのインタビューは、日本国憲法の上位に位置する日米合同委員会の存在を踏まえて、関東上空に広がる横田空域を焦点に、米軍によって制限された日本の主権の実態に迫ります。

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