時の試練に耐えた中央アジアのロシア鉄道路線

2019年5月5日
ドミトリー・ボカレフ
New Eastern Outlook

 ロシアはユーラシア鉄道システムで重要な役割を果たしている。モスクワをロシア極東のウラジオストクと接続する世界最長の鉄道網シベリア横断鉄道が、ユーラシアを横断している。ロシアの鉄道技術と専門家は高く評価されており、世界中で求められている。それ故、ロシアの国有鉄道会社、ロシア鉄道(RZD)はインド、イスラエル、インドネシア、韓国、タイ、セルビア、ブラジル、サウジアラビアなどで設計、構成と輸送ネットワークの近代化プロジェクトに取り組むよう招待されている。

 ロシアの鉄道は、その鉄道網が革命前ロシアと革命後のソビエト起源のものである中央アジアの旧ソビエト共和国(カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)と伝統的に提携してきた。

 1991年、ソヴィエト社会主義共和国連邦が瓦解した際、この地域の鉄道システムも崩壊した。それで、19世紀末に中央アジア全域を網羅するために出現し分岐した(カザフスタンを除き、全て旧ソ連邦の中央アジア共和国)中央アジアの鉄道網は、ソヴィエト社会主義共和国連邦の崩壊とともに、タジク、キルギス、トルクメン、ウズベクの個別鉄道にわかれた。

 様、中央集権化された指導力の欠如、ソ連後の経済危機や、新たに独立した国々の間の複雑な関係や内部抗争が、地域の輸送システムの接続性を低下させた。鉄道は荒廃し始めた。にもかかわらず、中央アジア諸国は1990年代の危機を切り抜け、彼らの鉄道は嵐の後もまだそこにあり、彼らは更に多少拡大することに成功し、他の国々と接続さえした。1996年、トルクメニスタンとイランは彼らの鉄道を接続した。しかしながら、ソヴィエト社会主義共和国連邦崩壊から20年、中央アジア諸国の鉄道網は一般に、依然遅く、不安定なペースで発展していた。

 2013年に、中国は、輸送・経済構想、一帯一路構想(OBOR)を立ち上げたが、それはこの領域における、急速で大規模な開発の刺激を与えた。OBOR構想の目的は、世界の経済を統合し、地球上の主要陸路と海路を結ぶため世界的な輸送網を構築することだ。新シルクロード(NSR)として知られているOBORのサブプロジェクトは、主に鉄道に焦点を当て、ユーラシアの陸路を結ぶよう設計されている。NSPの主目的は、中央アジアを通してヨーロッパと東アジアをいっそう緊密に結びつけることだ。中国は中央アジアの鉄道をそれ自身の鉄道と結び、それらを近代化し、拡大し、延長することに決めた。中央アジア諸国政府の支持を得て、中国は中央アジアのインフラに対する大規模投資を開始した。

 統一されたソ連輸送システムのリンクとして創設された中央アジアとカザフスタンの鉄道の主な焦点は、この地域をロシアと結ぶことだったことに留意すべきだ。ソ連崩壊後、これらのリンクは、ロシア連邦が、新独立国家のそれぞれと関係を維持し、重要な貿易相手国のまま続き、この勢力圏を保持するのを助けた。だが、多くの専門家の予想に反し、ロシアは、地域に新シルクロードを作る中国の到来を、ロシア領土への不法侵入とは見なさなかった。ロシアは、経済と地元住民の生活水準の改善は地域安全保障を強化し、国際テロの脅迫を減らすのを助けることを認識して、ロシア連邦は、中央アジアやカザフスタンや全中央アジアの地域を発展させる上で、中国の支援を歓迎した。さらにロシアは自身の国益のために新シルクロードに関与することを望んでおり、シベリア横断鉄道はその主な支線の一つになる可能性を持っている。

 だが同時に、ロシアが中央アジアで、中国に自由裁量権を与えるのは賢明ではないだろう。地域のインフラを開発する際、ロシアの立場は考慮される必要がある。中国-キルギスタン-ウズベキスタン鉄道プロジェクトの状況は示唆に富んでいる。

 全ての中央アジア諸国の中で、キルギスタンの鉄道は一番延長されておらず、最も劣化している。キルギスタンは、あらゆる新鉄道プロジェクトを歓迎すしそうに思われる。中国-キルギスタン-ウズベキスタン鉄道という発想は、それが1990年代に初めて提案されたとき大歓迎された。中国机械?出口(集団)有限公司が鉄道建設を計画した。一帯一路構想が始まる10年前の2003年に、中国はプロジェクト実現可能性調査を行うために240万ドル投資した。中国はキルギスタンに大きな利益を約束した。ウズベキスタンからアフガニスタン、イランとトルコまで、更にもっと遠くヨーロッパまで新しい鉄道を延長した後の、中国から欧米までの陸路の大幅な近道は、中国運輸企業の人気を得ることが確実で、鉄道の通過はキルギスタンに年間最高2億ドルをもたらし始めるはずだ。同時に、キルギスタンは海へのアクセスを得るはずだ。

 しかしながら、草案を慎重に検討したところ、キルギスタンとロシア連邦双方は様々な問題に気づき、疑問が提起された。

 第一に、キルギスタン経済が提案された鉄道経路で大きく刺激されるように感じられないことだ。計画に基づけば、鉄道はトルガルトからカラスウへ、東から西へとキルギスタンの狭い地域を横断する。そのため、レールは国のごく狭い地域に敷設され、鉄道はキルギスタン国内輸送システムの大きな改良にはならない。加えて、この通過が年単位で2億ドルを生み出すという見積もりはかなり誇張されていると多くの専門家が考えたのだ。

 第二に、輸送回廊はウズベキスタン国境に近いオシ市付近の南キルギスタンを通過する。多数のウズベク人が南キルギスタンに住んでおり、キルギス住民との関係には激動の時代があったのを覚えておくことは重要だ。時にキルギスタンの南の首都と呼ばれるオシは、1990年に起きた血まみれのウズベク-キルギス衝突(オシ暴動)と2010年(南キルギスタン暴動)の中心で、そこで何千という人々が亡くなった。軍事介入でしか暴動に終止符を打つことができなかったのだ。

 隣接するウズベキスタンで過激派が広めている急進的イスラム至上主義の考えが、現在南キルギスタンに暮らす民族、ウズベク人の間で人気を得ている証拠がある。理論的には、中国-キルギスタン- ウズベキスタン鉄道は、問題を抱えたキルギスタンの地域と、ウズベキスタン過激派地下組織間のつながりを強化する可能性があり、対立が再び起きた場合、非合法武装集団用の武器が、ウズベキスタンからオシへの経路に沿って過激派戦士により供給されかねない。1990年、オシ暴動の際、自分たちの親類がキルギスタンでキルギス人を壊滅するのを手伝うため、ウズベク-キルギス国境を突破しようと懸命だった、ウズベキスタンからの数千人の人々を阻むのを、警察と軍がぎりぎりに成功したことを考えれば、この理論は却下無下にはねつけるべきではない。だから、オシ地域での鉄道建設を開始し、首都ビシュケクが位置する北キルギスタンがそうした接続を持たないまま、それをウズベキスタンと接続するのは、キルギスタンで力の均衡を変え、様々な過激派が、その違法行為を強化する理由になりかねない。

 最後に、可能性は低いが、もし南キルギスタンで政府軍と過激派間で紛争が勃発すれば、キルギスタン北部から南キルギスタンを切り離している鉄道網の鉄道盛土や他の構造物が、非合法武装集団によって、政府軍に対し、自身の防衛線を作るために利用される可能性も排除できない。

 キルギスタンが経済的にも安全保障上からも、心から関心を持っている鉄道は、ビシュケクを最も遠い南の地域と結び付け、北から南まで広がるものでなければなるまい。

 第三に、中国-キルギスタン-ウズベキスタン鉄道建設の経費は、1990年代当時で、13億ドル以上と見積もられており、今この数字は既に約70億ドルと考えられている。キルギスタンにこの種の資金はなく、キルギスタンは、負債を大きく増やすことになる、中国からの融資が必要だろう。それだけでなく、中国は、彼らの融資と引き換えに、金を含め、キルギス鉱床に対するへのより大きな権利を得ることを期待している。

 それゆえ、キルギスタンは中国提案に基づく中国-キルギスタン-ウズベキスタン・プロジェクトでは不利益を被ることになり、キルギスタンにとって、理論的に安全保障上の脅威にさえなり得る。地域のあらゆる他の国々と同様、キルギスタンの安全保障はロシアの安全保障に直接影響する。戦争とテロの絶え間ない脅威がある中央アジアの隣人が、ロシアのそばにあるという条件のもとで、ロシア連邦は常に警戒を怠らないようにしなければならない。中国-キルギスタン-ウズベキスタン・プロジェクトの無期限延期に、ロシアが関係していがたかどうかは明きらかではない。

 2019年3月28日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がキルギスタンを公式訪問した際、プロジェクトはこの春再び提起された。キルギス共和国で鉄道網を開発するプロジェクトに関する協力覚書を含め、多くの重要な協定がロシア大統領訪問中に署名された。文書はロシア運輸省とロシア鉄道とキルギス運輸道路省とキルギスの鉄道企業、キルギス鉄道会社Temir Zholuに署名された。中国-キルギスタン-ウズベキスタン鉄道は、覚書中の多くの他の有望なプロジェクトの中に再度登場した。キルギスタンは、中国企業の代わりにロシア鉄道がそれを建設するよう要請した。ロシア鉄道の担当者による計画概要はまだない。おそらく彼らは中国計画の欠点を再検討し、経路を調整するだろう。鉄道は北から南へとキルギスタンを通って建設されるはずだ。それはキルギスタンをロシアと接続する唯一の鉄道であるカザフスタンへの路線に接続される可能性がある。ともあれ、ロシア鉄道と協力したいというキルギスタンが表明した希望は、ロシア連邦に大きな機会を与えるはずだ。ロシアは、中国や一帯一路構想と競争する態勢にはないが、さりとて中央アジアを放棄するつもりはなく、ロシアが地域で影響力を維持するため良い輸送回廊が必要なのだ。

 ドミトリー・ボカレフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/05/05/russian-railway-tracks-stand-the-test-of-time-in-central-asia/

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 映画『誰がために憲法はある』を見た。松元ヒロ氏の『憲法くん』を基にしたドキュメンタリー映画。「もうすぐぼくはリストラされそうだ」という一人芝居。主演は朗読劇『夏の雲は忘れない』を続けてきた女優。朗読劇を続けてきた理由に、小学校時代の初恋の人があった。小川宏ショーの、会いたい人に会わせるコーナーで、カーテンの向こうから現れたのは老夫婦。当時、息子を広島に疎開させていたが、あの日原爆投下の爆心近くで中学校生徒総出で延焼予防作業中だったと言ったのだ。

 『はだしのゲン』アラビア語版普及支援のためのTシャツ販売という記事をみかけた。
「はだしのゲン」翻訳者のグループ アラビア語版の出版を支援

 岩波書店の月刊誌『世界』6月号、いつも通り、「メディア批評」から拝読。「元号決定狂騒曲 ─ テレビが問われるべき思考停止。」
 次に拝読したのは「この労働組合つぶしは何を意味するか」。筆者が何冊か著作を拝読している熊沢誠甲南大学名誉教授だったので、早速拝読。こういう重大な問題、いわゆる「マスコミ」は報じているのだろうか。昼の痴呆バラエティーには期待すべくもないが、まっとうな労働組合潰し、芸能人の薬物どころではないという大問題だろう。

 大メディアが黙殺する「倉敷民商弾圧事件」の“異常”さ

と同根の問題。

 もちろん、メディアは民主主義の味方ではない。

日刊IWJガイド「重大ニュース! テレビは民主主義の味方ではなくなった! 民放連が昨日の衆院憲法審査会で、改憲の『国民投票運動の放送対応について進めてきた検討作業はこれで一区切り』と表明! テレビCMの量的な自主規制なしに改憲が発議されれば、緊急事態条項創設へまっしぐら!!」 2019.5.10日号~No.2430号~(2019.5.10 8時00分)