中国の中央銀行制度

お札の発券銀行である中央銀行制度は砲声とともに始まった。世界初の中央銀行は1694年に民間資本としてロンドンに創立されたイングランド銀行である。同行はフランスとの戦争費用を調達して政府に融資するのと引き換えに、金銀の裏付けのない紙幣発行の独占権を得た。
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 米国では1861年、南北戦争が勃発。リンカーン大統領は62年に「永続的な通貨発行制度」と宣言して政府紙幣「グリーンバック(緑背紙幣)」を発行し、戦費を調達した。
 政府紙幣だと、政府は国債発行せずとも、財源を確保できるのだが、英国などの国際金融資本が強く反発した。国債を売り買いすることでもうける機会が失われるからだ。リンカーンが暗殺されたあと、米国でグリーンバックは徐々に廃され、英国をモデルとした民間金融界出資の中央銀行システム「連邦準備制度」が1913年に設立された。
 米国では政府が直接、通貨を発行することのメリットを評価する声はいまなお、根強い。政治権力者にとっては、政府が直接、通貨発行権を掌握できれば、ウォール街から自由になれる。
 中国の通貨、人民元制度は実は、中央銀行制度と政府紙幣発行制度の両側面を兼ね備えている。大国としては比類ない、いいとこどりである。
 詳しく言うと、発券銀行である中国人民銀行は軍と行政府同様、党の支配下に置かれている。人民銀行から資金供給を受ける国有商業銀行も党支配下にある。つまり、人民銀行を中心とする金融システム全体が党によってコントロールされる。通貨の発行と配分権は党指導者が保有しているのだから、人民元はその本質において、政府紙幣である。見かけは日米欧のような中央銀行制度をとっているのだから、人民元はグリーンバックのように国際金融資本から憎まれることもない。世界の大手金融機関は人民元業務を新たな収益源にしようと躍起になっている。
 中国が2008年9月のリーマン・ショックから世界で最も早く立ち直った秘密はこの人民元制度にある。当時の胡錦濤総書記・国家主席は人民銀行に人民元資金の国有商業銀行への大量供給を命じ、商業銀行は前年比で2・3倍も融資を増やさせた。
 あとから見ると、乱開発、不動産バブルと代償は大きいが、ともあれ投資ブームが起き、経済は09年に2ケタ成長に舞い戻り、10年には国内総生産(GDP)規模で日本を抜き去った。もっと恐るべき事実がある。
 人民元資金供給こそは中国の軍拡の原動力だ。グラフを見ればよい。リーマン後、人民銀行による人民元資金供給量がドル換算で1兆ドル増えるごとに、軍事費は約500億ドル増えている。中国は米国の量的緩和政策に伴うドル資金増加量に見合う分、通貨を膨張させてきた。それに合わせて軍事にカネをつぎ込んだのだ。毛沢東は「銃口から権力が生まれる」と言ったが、カネから銃口が生まれる。

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